2009-09-27

研究の「今」をどうやって知る?

久々の更新になってしまいました。

研究者やその卵である大学生・大学院生は自分の専門分野で最近どのような進展があったのか、そして今熱い研究テーマは何なのかということを知るために、日々論文を読んでいるでしょう。しかし、大学生・大学院生はここで一つの問題に直面します(というか僕自身がそうです)。それはすでにプロである教授・准教授・助教でもなければ単に雑誌の新着論文を片端から読んでいっても、その分野の研究の流れ、あるいはある研究の注目度というものはわからないということです。

もし、主要な雑誌の全ての論文を数年間コンスタントに読んでいる人がいれば、ある程度その分野の流れというものはわかるかもしれません。しかし、普通の大学生・大学院生というのはそれほどの時間はないはずです。

また、論文というのはただの報告であるため、その研究が注目されているか否か、あるいは価値があるか否か、ということは読んだだけではわからず、読者自身が判断しなければなりません。しかし、学生にはそもそもある研究が重要なものかどうかを判断するだけの知識・経験が足りません。

したがって、そのような知識・経験が足りない学生がある分野における研究の流れを知り、あるいはある研究の価値を判断するには、論文の文面そのもの以外の情報が必要になります(プロの研究者は専門分野の過去から現在に至るまでの流れを熟知しており、また研究の重要性を判断できるだけの判断力もあるはずので、外部からの情報はあまり必要ないわけです(全く必要ないわけではないと思います))。

では、一体学生は何を参考にしてそれらのことを知ればよいのでしょうか。以下にぼくのやり方を紹介してみます(ただし自分でも全部実践できているわけではありません)。なおしょせん経験の浅いM1のやり方ですので「こんなの当たり前だろ」とか「こんなの役に立たないだろ」とか「もっと他にいい方法あるだろ」とかのツッコミはあると思います。よろしければコメント欄で教えていただければ幸いです。あと、僕の専門分野が有機化学であり、他の分野には通用しない可能性があることを一応お断りしておきます。

  • まずは基本ですが、参考文献を読むこと。たいていの場合、イントロ等で関連する研究、先行する研究の論文が紹介されています。全てを読んでいる余裕はないでしょうが、必要そうなものはざっとタイトル、概要には目を通すよいのではないでしょうか。
  • 総説を読む。前項にも関係しますが論文中に総説が引用されていることがあります。これも全て読んでいては重いかもしれませんが、導入からその分野の発展の流れ、最近の進展などまとまっていて便利です。
  • ある研究者に注目する。一人の研究者であんまりたくさんのテーマで研究をすることはできないので、その研究者の出している論文というのは何か一貫したテーマがあるはずです(もちろん研究テーマが一つとは限りませんが)。そこで、ある分野を代表する研究者、あるいは自分の好きな研究者の出す論文をチェックしていれば、その分野の進展状況がわかるかもしれません。
  • Angew. Chem. のVIPやJOCのFeatured Article等、「おすすめ」の論文を読んでみる。自分の好みには合わないこともありますが、少なくともその雑誌の編集者は重要だと判断したわけで、読んでみる価値があるだろうということになると思います。
  • Acc. Chem. Res. を読んでみる。この雑誌は、総説とは違いますが、ある研究者が自分の研究をまとめて解説している論文が掲載されています。ここに載る研究はある程度重要性があるものだと考えられますので(多分。ちょっと自信ありませんが)、見てみるとよいと思います。最低でもその研究の流れというものはよくわかります。
  • 論文の引用回数を調べる。これは、新着論文には使えませんが、発表されてからある程度時間のたった論文の場合、重要な論文は多く引用されると考えられることから、引用回数を調べてその重要性を測ろうということです。もちろん多く引用されているから価値がある、あるいはほとんど引用されていないから、価値がないとは言い切れませんが、概ね使える方法だと思います。Web of KnowlegeでTimes Citedを見れば引用回数がわかります。
  • 学会に参加する。僕自身学会にほとんど参加したことないので(1回化学会年会に行ったことがあるだけ)、こんなことを書くのもどうかと思うのですが…。学会では、テーマの近い研究は(場所的、時間的に)近いところに配置されるため、関連する研究を一度に知ることができます。また、研究者たちの生の反応が見られるため、ある研究の重要度というのも感覚でわかるかもしれません(このあたりちょっと推測)。

といった感じです。自分の専門外の分野の論文を評価しなければならないときにも使えるかもしれません。